【鹿児島】山の中にひっそり残る三条小鍛治宗近遺跡を訪ねて

鹿児島市五ヶ別府町。

皇徳寺ニュータウン側から、何か面白いものはないかと山の中をウロウロしていたとき、偶然見つけた「三条小鍛治宗近遺跡」と書かれた案内看板で。

三条小鍛治宗近――。

名前を聞いて「あの刀匠か?」と思った方もいるかもしれません。

平安時代の刀工として知られる、あの三条小鍛治宗近です。

自分は正直、知らなかったから「誰?」って感じでした(笑)。

山の中にある「三条小鍛治宗近遺跡」

三条小鍛治宗近遺跡への案内看板
三条小鍛治宗近遺跡への案内看板

道端にあった「三条小鍛治宗近遺跡」の案内看板。

「50m先左」と書かれており、谷山観光協会の名前も入っています。

案内に従って進んでいくと、次第に道は細くなり、山の中へ。

山の中に見える石碑
山の中に見える石碑

小道から少し外れた場所に目をやると、山の中に何やら石碑が見えます。

三条小鍛治宗近遺跡の石碑
三条小鍛治宗近遺跡の石碑

竹藪の手前に、「三条小鍛治宗近遺跡」と刻まれた石碑がありました。

山の中にポツンと残された石碑。

案内看板がなければ、ここに何かの史跡があるとはまず気づかないような場所です。

三条小鍛治宗近遺跡の解説板
三条小鍛治宗近遺跡の解説板

石碑の近くには解説板も設置されています。

三条小鍛治宗近とは?

三条小鍛治宗近(さんじょうこかじむねちか)は、平安時代中期から後期にかけて活躍した刀工とされる人物です。

京都の三条に住んで刀を鍛えたことから「三条宗近」と呼ばれ、三条派の祖として知られています。

その名を一躍有名にしたのが、刀剣にまつわる「小狐丸(こぎつねまる)」の伝説。

『能』や『謡曲』などで知られる「小鍛冶」では、宗近が一条天皇の命を受けて刀を打つことになったものの、相槌を務める刀鍛冶が見つからず困っていたところ、稲荷明神が狐の姿で現れ、宗近の相槌を務めて名刀「小狐丸」を完成させたという物語が描かれています。

この伝説から、宗近は実在の刀工でありながら、後世には伝説的な刀匠としても知られるようになりました。

なぜ鹿児島に宗近の遺跡が?

では、なぜそんな宗近の遺跡が鹿児島市の五ヶ別府町にあるのでしょうか。

実は、鹿児島には宗近にまつわる伝承が残っています。

宗近が京都から薩摩へ下り、この地に一時期住んで刀を鍛えたという伝説です。

そして、この宗近の伝承は、先日訪れた「波之平刀匠」の伝承ともつながっています。

薩摩を代表する刀工として知られる波平派も、古くから京都や大和などの刀工との関係を伝える系譜・伝承を持っています。

このため鹿児島では、宗近の伝説と波平刀匠の伝承が結びついて語られることがあります。

ただし、ここは少し注意が必要です。

「遺跡」といっても、残っているのは石碑

現在この場所に残っているのは、宗近が実際に暮らした建物や刀鍛冶の跡ではありません。

あるのは「三条小鍛治宗近遺跡」と刻まれた石碑と解説板。

井戸跡など、宗近がここで生活していたことを直接裏付けるような遺構が残っているわけでもありません。

そもそも、この場所に宗近が住んでいたという話自体、確実な史実として確認されているものではなく、伝説的なものとされています。

つまり、

「平安時代の名刀工・三条宗近が鹿児島に来て、この地に住んでいた」

という伝承を、後世に伝える場所。

そんな捉え方がよさそうです。

それでも、実在した有名な刀工の名前が、遠く離れた鹿児島の山の中に残っているというのは、なかなか興味深いものがあります。

山の中で偶然見つけた刀匠の伝説

今回ここを訪れたのは、もともと三条小鍛治宗近遺跡を目指していたわけではありませんでした。

皇徳寺ニュータウン側から「この辺りに何かないかな」と、いつものように周辺をウロウロ。

そこで偶然見つけたのが、最初の案内看板でした。

「三条小鍛治宗近遺跡 50m先左」

こんな看板を見つけたら、行ってみたくなります。

案内に従って山の中へ入り、竹藪の手前で石碑を発見。

そこにあったのは、かつての建物でも刀鍛冶の遺構でもなく、宗近の伝説を伝える一つの石碑でした。

波平刀匠の伝承とつながる薩摩の刀工伝説

鹿児島には、波之平刀匠をはじめ、刀にまつわる古い伝承が残っています。

今回の三条小鍛治宗近遺跡も、その一つ。

波平刀匠遺跡や笹貫井戸とはまた違った形ですが、「名刀を生み出した刀工がこの地にいた」という伝承が、現在の鹿児島の土地に石碑として残されています。

史実としてどこまで事実なのかは分からない。

けれど、そうした伝説が長い年月を経ても地名や石碑として残っているところに、こうした史跡を訪ね歩く面白さがあります。

山の中で偶然見つけた、小さな刀匠遺跡。

鹿児島の知られざる歴史スポットをまた一つ発見した、そんな訪問でした。

訪問日:2016年7月

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