鹿児島県日置市吹上町。
田んぼの中を走っていると、緑に囲まれた小さな公園があります。
「うそぶき公園」。
田んぼの中にぽつんとあるので、なんとなくオアシスのような雰囲気です。
そんな小さな公園の中央に、気になる碑が建っています。
名前は「うそ吹きの碑」。

碑の正面を見てみると、
「彦火々出見尊うそ吹き」
と彫られています。

彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)といえば、日本神話に登場する神様。
一般には「山幸彦」として知られている人物です。
最初は「うそ吹き」という名前から、昔話か何かで「嘘をついた」という意味なのかな?と思いました。
ところが、調べてみるとどうやら違うようです。
「うそぶき(嘯き)」という言葉には、古くから口笛を吹くことや、そこから転じて風を吹かせることという意味があります。
そして海幸彦・山幸彦の神話では、兄の海幸彦と争った山幸彦が風を起こす場面が伝えられています。
つまり、この「うそ吹き」は「嘘を吹く」という意味ではなく、彦火々出見尊、つまり山幸彦が風を吹かせたことに関係しているのではないかと思われます。
……これは面白い。
「うそつきの碑」ではなかった(笑)。
碑の裏側にも細かな文字がびっしりと刻まれています。

何が書いてあるのか非常に気になりますが、残念ながら読み取れませんでした。
さらに公園内には解説板もあります。

ただ、この解説板はかなり劣化していて、こちらもほとんど文字を読むことができません。
せっかく碑の由来を説明していると思われるのに、読めないのが残念。
ちなみに、公園には「県営農村振興総合整備事業」と刻まれた記念碑も建っています。
大きな観光公園というわけではなく、田んぼの中にちょっとした緑地と碑がある、小さな公園です。
そんな場所に、なぜ「彦火々出見尊うそ吹き」という碑が建っているのか。
ネットで調べても、この碑や「うそぶき公園」について詳しく説明した資料はあまり見つかりませんでした。
ただ、「うそ吹き」という言葉について調べてみると、海幸彦・山幸彦の神話とのつながりが見えてきます。
山幸彦の本名ともいえる彦火々出見尊。
そして「うそぶき」という、風や口笛に関係する古い言葉。
もしかすると、この碑も海幸彦・山幸彦の伝説をもとに建立されたものなのかもしれません。
吹上町の南隣、南さつま市や金峰町周辺にも海幸彦・山幸彦にまつわる伝承が残されています。
そのため、この地域一帯に伝わる神話・伝説との関係も気になるところです。
ただ、今回確認できた資料だけでは、この「うそ吹きの碑」が具体的にどの伝承をもとに建てられたのかまでは分かりませんでした。
裏面の文字や、劣化した解説板が読めれば、もう少し詳しいことが分かるのかもしれません。
田んぼの中にひっそりと残る小さな公園。
その中央に建つ「彦火々出見尊うそ吹き」の碑。
「うそ吹き」なんて名前だけ聞くと、ちょっと変わった碑に思えますが、調べてみると日本神話の山幸彦につながっているらしい。
こういう、現地で「何これ?」と思ったものを後から調べてみるのも、旅の楽しみのひとつです。
今度この辺りを訪れる機会があれば、読めなくなってしまった解説板の内容も調べてみたいところです。


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