鹿児島市和田にある伊佐智佐神社(いさちさじんじゃ)を訪ねました。
住宅街の中にある神社ですが、ここはただの神社ではありません。
現在の境内は、かつて「神前城」または「玉林城」と呼ばれた戦国時代の山城跡でもあります。
神社と城跡。
一見すると少し意外な組み合わせですが、境内には「玉林城址」と刻まれた石柱も残されており、この場所の歴史を今に伝えています。
伊佐智佐神社
伊佐智佐神社は、鹿児島市和田に鎮座する神社で、「六所権現」や「和田権現」とも呼ばれ、御祭神として伊弉册尊(イザナミノミコト)、速玉男尊(ハヤタマオノミコト)、泉津事解男命(ヨモツコトサカオノミコト)などを祀っています。
その起源は古く、紀伊国(現在の和歌山県)の熊野本宮・新宮を勧請したことに始まるとされ、その後、伊佐郡、志布志、佐多などを経て、現在の和田の地へ遷座したと伝えられています。
現在の場所に鎮座したのは、玉林城の跡地。
鹿児島県神社庁によると、この地は天文年間に「神前城(玉林城)」と称する山城で、島津実久と島津貴久の間で戦いがあった場所とされています。
玉林城跡に建つ神社

こちらが伊佐智佐神社の鳥居です。
鳥居をくぐり、参道を進んでいきます。

鳥居の横には、神社名が刻まれた石碑がありました。

階段を上った先が社殿。
正面から見ると、かなり立派な社殿です。
資料で見た伊佐智佐神社の社殿は木造の比較的簡素なものでしたが、訪れた2022年3月には、真新しく綺麗な社殿になっていました。
調べてみると、社殿は2012年に新装されたとのこと。
現在の美しい社殿は、比較的新しいものだったようです。


伊佐智佐神社の由緒
伊佐智佐神社は、熊野本宮・新宮を起源とする神社で、幾度かの遷座を経て和田の地へ移ったと伝えられています。
かつては谷山郷の総鎮守として信仰され、「六所権現」「和田権現」の名でも親しまれてきました。
神社の由緒によれば、佐多から和田へ遷座した際には、和田浜の久津輪崎に上陸し、そこから現在の玉林城跡へ移ったとされています。
現在では住宅地となっていますが、ここには古くから地域の信仰を集めてきた神社が鎮座しているわけです。
玉林城とは?
玉林城は、現在の鹿児島市和田にあった戦国時代の山城です。
「神前城」とも呼ばれ、伊佐智佐神社の鎮座地がその城跡にあたります。
戦国時代、この地域では島津氏の内部でも激しい争いが繰り広げられていました。
玉林城は島津実久側の城として機能していたとされ、島津貴久による谷山攻略の際には、この城も攻撃を受けています。
鹿児島県神社庁の由緒にも、島津実久と島津貴久の間で交戦があった場所として記されています。
鹿児島市の中世城館跡調査でも、神前城は戦国時代の城館として記録されています。
現在は城郭として整備されているわけではありませんが、神社境内にその名残を見ることができます。
境内に残る「玉林城址」

境内の隅で見つけた石柱に「玉林城址」とはっきり刻まれています。
神社だけを目的に訪れていたら、見落としてしまいそうな場所ですが、ここがかつて城だったことを伝える貴重な手掛かりです。
さらに神社の裏手には、周囲より一段高くなった平場のような場所もありました。

これが玉林城の遺構なのかどうか、現地でははっきり確認できませんでしたが、城跡ということを意識して見ると、こうした地形も気になってきます。
現在は住宅地に囲まれているため、戦国時代の山城だった頃の姿を想像するのは難しいですが、境内に残る石柱や地形から、ここがかつて城だったことを感じることができます。
7月9日は伊佐智佐神社の六月灯
伊佐智佐神社では、毎年7月9日に六月灯が行われています。
鹿児島の夏の風物詩として知られる六月灯は、神社や寺院で灯籠を奉納し、夜店なども並ぶ夏祭りです。
7月9日の六月灯の日にも訪れてみました。

普段の神社とは違い、参道にはたくさんの屋台が並んでいます。

参道筋にも屋台が並び、かなり賑やかな雰囲気!
静かな神社の姿とは一転して、地域の人たちが集まる夏祭りの会場になっていました。
こうした地域に根付いた祭りが現在も続いているというのも、長い歴史を持つ神社ならではの光景なのかもしれません。
神社の境内に残る戦国時代の城跡
伊佐智佐神社を訪れてみると、立派な社殿だけでなく、その場所がかつて玉林城という戦国時代の山城だったことにも気づきます。
「玉林城址」と刻まれた石柱が残る一方、城跡としては大規模な遺構が残っているわけではありません。
それでも、神社の裏手に残る地形などを眺めながら、ここに城が築かれていた時代を想像してみるのは面白いものでした。
神社を参拝するだけなら短時間で終わってしまう場所ですが、玉林城の歴史を知ってから歩いてみると、境内の見え方も少し変わります。
その境内には、熊野信仰の歴史と、戦国時代の城跡という二つの異なる歴史が重なって残っていました。
訪問日:2022年3月、2022年7月9日(六月灯)


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