【鹿児島】殿様が「がっくい」した?伊作街道沿いに残る「がっくい井戸」

鹿児島県日置市吹上町の伊作街道沿いを走っていると、ちょっと気になる井戸がありました。

その名も「がっくい井戸」。

「がっくい」と聞くと、鹿児島弁で「ガッカリ」という意味を思い浮かべてしまいますが、どうやらそれとは違うようです。

井戸のそばにある説明看板。

がっくい井戸と書かれた写真付きの案内板
がっくい井戸

看板に書かれているのは、こんな言い伝え。

昔、お殿様がこの場所で休んだ際、乙女が汲んだ井戸水を飲んだところ、あまりにも冷たくて美味しかったため、腹いっぱい飲んだ。

そして殿様は大変満足した。

それが「がっくい井戸」と呼ばれるようになった由来。だそうです。

……なんとも平和な伝説です。

「殿様が水を飲んで満足したから、がっくい井戸」。

そもそも「がっくい」とは何なのでしょう?

がっくいって何?

ここが気になるところ。

鹿児島弁では「がっくい」という言葉が「ガッカリ」の意味で使われることがあります。

でも、この井戸の伝説では殿様は大満足。

ガッカリとは正反対。

調べてみても、今回の「がっくい」が鹿児島弁の「ガッカリ」と同じ意味なのか、それとも井戸や地名に由来する別の言葉なのか、はっきりした説明は見つかりませんでした。

少なくとも、現地の伝承では「美味しい水に殿様が満足したこと」が名前の由来として伝えられています。

もしかすると、昔の言葉や地名が由来なのかもしれません。

どんな井戸なのか

井戸といっても、よく想像する「深い穴に桶を落として水を汲む」タイプではありません。

屋根が付いた小さな水場のようになっています。

屋根の付いた洗い場タイプの井戸
屋根の付いた井戸

水が湧き出してくる場所を石などで囲った、洗い場のような造りです。

水面を覗いてみると、かなり澄んでいます。

がっくい井戸表面、水が溜まって今も湧き出ている
井戸の水面

横の水路とつながっているのか、小魚も泳いでいました。

ただし、現在この水が飲料水として利用できるのかどうかは分かりません。

昔の伝説では「美味しい水」とされていますが、現在の水質まで保証されているわけではないので、勝手に飲むのはやめておいたほうがよさそうです。

乙女って誰?

この伝説でもうひとつ気になるのが、「乙女」です。

なぜ「村人」ではなく、わざわざ「乙女」が水を汲んだのでしょう?

もちろん、昔話としての表現なのかもしれません。

ただ、この先には「乙女月」という地名もあります。

もしかすると、この地域に伝わる昔の話や地名と関係して、「乙女」という存在が伝説として残ったのかもしれません。

……なんて考えてみましたが、こちらも詳しい由来までは分かりませんでした。

そもそも実在した女性なのか、伝説上の乙女なのかも不明です。

こういう「なぜ?」が残るところも、昔から伝わる水場らしいところです。

お殿様は誰?

そして最大の疑問。

「お殿様って誰?」

これも看板には具体的な名前が書かれていません。

この先には、かつて伊作氏の居城だった伊作城跡があります。

伊作城は南北朝期に築かれ、戦国時代の終わりまで伊作氏の居城となっていました。

特に伊作氏10代の島津忠良(日新斎)は、戦国島津の礎を築いた人物として知られています。

さらに伊作城は、島津義久・義弘・歳久・家久ら「島津四兄弟」の誕生地としても知られています。

そう考えると、

「この街道を行き来した島津家ゆかりの人物が、ここで休憩して井戸水を飲んだのでは?」

なんて想像してしまいます。

ただし、がっくい井戸の殿様が伊作城の殿様だったと裏付ける資料は確認できませんでした。

なので、これはあくまで想像。

伝説は伝説として楽しむことにします。

伊作街道沿いの小さな水場

現在は車で通り過ぎてしまいそうな場所ですが、昔はこの道を歩いたり馬で移動したりする人々にとって、水場は重要な場所だったのでしょう。

旅の途中で休憩し、冷たい水を飲む。

そんな光景を想像すると、「殿様が満足するほど美味しかった」という伝説にも、なんとなく納得できます。

現在のがっくい井戸は、屋根の付いた小さな水場。

水は澄んでいて、小魚まで泳いでいます。

でも、今となっては「いつ、誰が、なぜ、この名前を付けたのか」という部分がはっきりしません。

「がっくい」とは何なのか。

なぜ乙女だったのか。

お殿様とは誰だったのか。

そして、この井戸の水は今も飲めるのか。

調べれば調べるほど、逆に疑問が増えてしまいました(笑)。

とはいえ、こうした由来のはっきりしない小さな史跡も、実際に訪れてみるとなかなか面白いものです。

伊作街道沿いで、ひっそりと水を湛える「がっくい井戸」。

昔のお殿様が満足したという冷たい井戸水を、今も静かに残している場所でした。

すぐ近くには、もうひとつ「乙女月」という伝説が残る場所もあります。

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訪問メモ

所在地: 鹿児島県日置市吹上町(伊作街道沿い)
駐車場: なし
トイレ: なし

訪問日2016年8月

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