【鹿児島】お留と八郎の物語「乙女月」――伊作街道に残る小さな伝説

鹿児島県日置市。

以前紹介した「がっくい井戸」から、吹上方面へ少し進んだ伊作街道沿いに、また気になる案内板があります。

その名前は「乙女月」。

「乙女月」という地名なのか、それとも何かの伝説に由来する場所なのか。

気になったので立ち寄ってみました。

「乙女月」と書かれた説明板。沢に座る女性のイラストも描かれている
乙女月(おとめつき)の説明看板

看板には、こんな話が書かれています。

昔、「お留」という女性がいました。

お留は「八郎」という愛する男性に会いたくて、峠まで急いで向かったそうです。

ところが日が暮れてしまい、お留は途方に暮れてしまいます。

そんなとき、大きな月が出て辺りを照らしました。

この話を聞いた殿様が、お留の一途な純情に心を打たれ、この辺りを「乙女月」と名付けた。

そんな伝説が残っているそうです。

……なんとも昔話らしい話です。

お留が座った沢?

そして案内板のすぐ横には、お留が座っていたという沢があるらしい。

せっかくなので見てみます。

お留めが座ってたと思われる沢、藪で見えない
お留が座ってたと思われる沢

……。

沢、どこ?(笑)

草が生い茂っていて、何が何やら分かりません。

かつてお留が腰掛けて月を眺めたという場所も、今ではすっかり藪の中です。

案内板がなければ、ここに何かの伝説があることすら気付かないかもしれません。

乙女月って、どういう意味?

ここでちょっと気になるのが「乙女月」という名前。

看板には「この辺りを乙女月と名付けた」とありますが、具体的に地名なのか、場所の呼び名なのかまではよく分かりません。

そして、もうひとつ思いついてしまいました。

「お留」という名前。

お留め → 乙女?

……まさか、これが「乙女月」の名前の由来だったりして?

なんて考えてみましたが、もちろんこれは私の勝手な想像。

「お留」と「乙女」の関係を裏付ける資料は見つけられませんでした。

それでも、わざわざ「お留」という女性の名前を残したうえで「乙女月」と呼んでいるので、ちょっと気になるところです。

お殿様は「がっくい井戸」の殿様?

さらに気になるのが、物語に登場する「お殿様」。

この乙女月から少し戻ったところには、以前紹介した「がっくい井戸」があります。

あちらの伝説にも、

お殿様

が登場します。

がっくい井戸では、殿様が乙女の汲んだ冷たい井戸水を飲み、あまりの美味しさに腹いっぱい飲んで大変満足したという話でした。

そして今回の乙女月でも、殿様がお留の話を聞いて、その純情に心を打たれています。

どちらも伊作街道沿い。

しかも距離もそれほど離れていません。

……同じ殿様だったりするのでしょうか?

残念ながら、看板には殿様の名前が書かれていないので分かりません。

同じ人物なのか、それとも別の殿様なのか。

これも謎のままです。

ただ、近い場所に「殿様」が登場する二つの伝説が残っているというのは、ちょっと面白いですね。

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看板のイラストが気になる

ところで、この説明板には、お留と思われる女性のイラストが描かれています。

沢の石に腰掛けている女性。

これがなかなか印象的です。

物語の舞台が「殿様」の時代だとすれば、昔の女性を描いたイラストなのかなと思うのですが、よく見ると着物というより、白いローブのような服。

そして長い黒髪を結わずに、そのまま下ろしています。

昔の日本女性というより、ちょっと現代的というか、神秘的な雰囲気があります。

月明かりの下で沢に座る女性を描いたものなので、あえてこういうデザインにしたのかもしれません。

それにしても、実際にその場所を見てみると藪だらけ。

このイラストのように、女性が沢に腰掛けて月を眺めている姿を想像するのは、なかなか難しい状態でした(笑)。

こんな話が残っているのも面白い

正直なところ、「愛する男性に会うため峠まで急いだ女性が、日暮れに途方に暮れていたところ、大きな月が出た」という話自体は、全国を探せば似たような昔話がいくつもありそうです。

でも、そんな小さな物語が、この土地では「乙女月」という名前とともに残されています。

お留という女性が本当に存在したのか。

八郎という男性は誰だったのか。

殿様は誰だったのか。

いつ頃の話なのか。

なぜ、この場所が「乙女月」と呼ばれるようになったのか。

今回調べただけでは、そこまでは分かりませんでした。

それでも、こうした小さな伝説が看板になって現在まで残されているというのは、ちょっと面白いことだと思います。

特に「お留」という具体的な名前まで残っているところを見ると、昔から地域の人たちの間で語り継がれてきた話なのかもしれません。

「がっくい井戸」と一緒に

近くには、先ほどの「がっくい井戸」。

そして、そこから少し進んだところには「乙女月」。

どちらにも「殿様」が登場し、どちらも伊作街道沿いに残る昔話です。

直接つながった伝説なのかどうかは分かりません。

でも、こうして続けて訪れてみると、なんとなく同じ街道沿いに残る昔話としてセットで見えてきます。

冷たい井戸水を飲んで満足した殿様。

月明かりの下でお留の話を聞いた殿様。

果たして同じ殿様なのか。

それとも、まったく別の話なのか。

今となっては分かりません。

現在は草に覆われてしまった沢と、少し古びた説明板。

その場所には、昔のお留と八郎、そして月をめぐる小さな物語が残されていました。

ただ、伊作街道を通る機会があれば、「がっくい井戸」と「乙女月」を続けて探してみるのも面白いと思います。

訪問メモ

所在地: 鹿児島県日置市吹上町(伊作街道沿い)
駐車場: なし
トイレ: なし

訪問日:2016年8月

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